入院した病院は、パリで一番の病院、と言うのは、パリ在住のママ友からも教えてもらい、どうやら第三者格付け機関によって決まっているらしく、本当に一番だということはわかった。(別に疑ってた訳じゃないけれども(^^))
医療レベルも、自分が受けた手術は、ネットで調べると、少なくとも日本では失敗例も多く、本当に困難な手術だったことがわかり、改めて先生方への感謝の気持ちが湧いてくる。
が、そんな一流な医療レベルとは裏腹に、夫とともに「!?」と驚くことが多かったのが、病室の患者に対するサービス。日本と違って、早く病院から患者を追い出すのが病院の役目なので、そんなこととも関係しているのかも知れない。とにかく違いが面白かったので、忘れないうちに書いておこうと。
・見た目、自由
人種が多様なので、そもそも見た目は誰もが違っていて個性的なのだが、それに輪をかけて、看護婦さんたちは個性的だった。
鼻ピアスの人、香水プンプンの人、派手なネールの人、髪型がパンクな人、ガムを噛みながら対応する人。
日本の看護婦さんたちがいかに画一化された"清潔な"スタイルなのかを実感した。患者さんに求められているからそうなんだと思うけど、一体この違いは何だ・・・!?
ちなみに私が一番好きだったのは、パンク風の人。もみあげ部分が黒髪で、残りが真っ赤に染められていて、はっきりいって一番白衣が似合わない人だったが、部屋のテレビのリモコンが無いと訴えたら、「ああ、あれ有料になっちゃうんだけど、有料ってやな感じだよね。いいよ、探し出して持って来てあげる。」と言って、小一時間ほどしたら、本当に持ってきてくれた。もちろん、無料扱い。リモコン、パクっちゃったよ~!パンクなのは、見た目だけじゃなかった・・・!
・患者に逆ギレ事件
ある朝、アフリカ系の掃除婦さんが部屋に来てお掃除してくれた。シャワールームのゴミ袋だけ回収し忘れて去ってしまったのだが、ま、後で頼めばいいや、と思っていた。
ところが、暫くして、彼女をスーパーバイズする立場らしき別のアフリカ系の女性が、大声で彼女を罵っている声が聴こえて来た。何だろう、と思う間もなく、私の部屋がガーッと開いて、スーパーバイザーが、「さっきの人は、きちんとシャワールームを掃除したのかしら?」と、強い口調で聞いて来たので、一緒に居た夫が、「あ、しましたよ。ゴミ袋だけまだ回収してないですが。」と答えると、さーっと部屋に入って来て、ゴミ袋を取り替えてくれた。
それからまた暫くして、先ほどの掃除婦さんがひどい剣幕で部屋にやって来た。曰く、「何で私が掃除してないって彼女に言うの!?」
よくわからないが、怒りに震えて居る。
夫と私は顔を見合せて目をパチクリ。
「私は何もそんなこと言ってないですよ。ただ、ゴミ袋を替えてくださいと頼んだだけです。」と夫が優しく丁寧な口調で答えた。
思うに、スーパーバイザーとウマが合わないか、あるいは本当に患者さんから苦情があったか何かで揉めていたのだろう。ただ、その揉め事を患者にぶつけられても・・・。
これも日本ではちょっと見られない光景かもしれない。
・職務と人種
掃除や配膳の仕事は、アフリカ系の女性しか居なかった。看護婦さんは、大半がコケージャンで、たまにちらりとアフリカ系。医師はコケージャンのみで、一人だけインド系っぽい人がいた。
パリの街で見かける清掃員も、皆アフリカ系。
確実に職務と人種に関連性があるように見える。
フランス人にはお馴染みなのかもしれないが、日本人から見ると物凄い違和感がある。
上海だと、地方出身出稼ぎ者の労働賃金が安く、戸籍法でも冷遇されていたりして、ほぼ同じ見た目の人種なのに、都市部の中国人との社会的地位の格差が激しい。清掃員とか日雇いは地方出身者。
フランスはアフリカ系移民、中国は地方からの出稼ぎ者が、社会の低賃金職務を支えている。
社会格差って何だろう?解消する手立てって何だろう?
上海で、阿姨という有難い働き手を雇いながら、日々感じていた自己矛盾な違和感を、奇しくもパリでも感じてしまった。
先述の掃除婦さんの怒りの本当の原因も、突き詰めたらそんなところにあるのかも知れない。
読みかけていた、社会格差を扱う社会学の本を早く読もう・・・
・インターン
昨日のエントリで、インターンの先生が多いと書いた。そう、日本だと、インターンの先生は若くて初々しい感じなのだが、こちらのインターンはベテランの雰囲気をまとっていて、実際、年齢も30前後に見える。
私の初診もインターンの先生だったが、普通にドクターと呼んでも遜色無い感じだった。
病室にも、何人ものインターンの先生が来たが、皆、初々しさとは程遠置く、自信と威厳があった。
10年かけて医者になる、その途中に居る人たち。・・・10年も!
助けてもらって改めて思う。医者って素晴らしい使命を持った職業だと。人を救う技を持った、崇高な職業の一つ。
息子も義父のような立派なお医者さんになって、人助けをしたらいいな~、と言うと、いつも義母が、「医者は本当に大変よ~」と、何やら実感を込めて言う。
10年かかって医者になるとしたら、息子が仮に医者になったら、その頃私は・・・ウン十歳!(皮算用が過ぎる想像!(^^))
う~ん。道のりは長い。
・夫、いじられる
アフリカ系の配膳のおばさまたちは、明るくて笑い上戸な人が多かった。井戸端会議が各所で繰り広げられて居た。
そんな中、夫が自分の食料の買い出しに行き、ピザの箱を抱えて私の病室に入ろうとした時のこと。
「ちょっと~、持ち込みダメよぉ~」
と、おばさまのひとりにからまれる夫。
「私たちにくれなきゃダメじゃない!わはは」
数人のおばさまにピザをねだられる夫。
「一切れあげましょうか?」
と、夫がコミカルに応酬すると、
「全部よ、全部!がはははは!」
などと言って、何やら長いこといじられていた。
こういうのは愉しくていいな、と思う。夫もいじられて楽しそうだった。人生、笑いが無いとね~(^^)
・看護婦の数
絶対的に少ない。日本に比べて。
経営の観点からすると、非常に効率がいいんだと思うが、日本のサービスに慣れていると、ナースコールで呼んでもいつまで経っても来ない看護婦さんに、驚く。
担当する患者の割り当てが多いのだろうか。薬とか、持って来てくれると言った切り忘れてしまった看護婦さんも居た。
患者の方もきっと日本人ほど厳しくないからだろう、「あ、忘れちゃった~」と普通にあっけらかんとしている。
洗面所の紙タオルが無くなった時は、看護婦さんではなく配膳のおばさまが来てくれたのだが、夫が呼ばれて、「あ、自分で取りに来て替えて」と指示され、備品のある部屋に連れて行かれていた。タオルを取りに行って替える夫。さすがに笑っていた。「患者の家族も要員か~(^^)」
・食事が不味い
フランスはグルメたちの国だからと言って、病院の食事が美味しいかと思いきや、大間違いだった。
不味い!

写真だと、一見良さげに見えるかも知れないが、おかずはどう見ても冷凍食品だし、クスクスはどこかのお惣菜屋さんで買ったんじゃないかという感じ。でもクスクスが一番ましだった。
夫に、「不味いね~!これ、冷凍食品じゃない?」と言うと、「うん、明らかにそうだね」と同意。
「病人にこんな食事でいいの!?」と言うと、夫は笑いながら、「なになに、病院でビストロの味でも期待してたワケ?入院費の一部は国民の税金で賄われているんだから、病院は入院患者を早く追い出したいんだよ。去りがたいほど美味しい食事を出すはずが無いでしょう?」と指摘された。ぐぐぐ、確かに。しかも、私はフランスに税金納めてないし・・・
食事のことを言えた身分じゃないことはよくわかった。
ただ、少しでも早く出て行ってもらおうというフランスの病院と、完治するまで居させようという日本の病院とでは、入院の目的から付随するサービスまで、全然違うことが、よ~くわかった。
長い目で見てどちらが良いのか、見当もつかないが、少なくとも、私は「早くお義母さんの美味しい料理を食べた~い!!!」と言う、欲深い執念のお蔭で、早く退院したいと言う気持ちに加速がかかったのは事実。日本で三か月入院した時は、快適で、ご飯も美味しくて、三か月イケるわ~、なんて思ったものである。
・・・と、とりあえず、こんなところが印象に残った違い。日本でも入院経験があったお蔭で、何がどう違うのか、存分に楽しめた気がする。
すごくミクロな視点だけれども、それぞれの国の医療の問題とか、社会の問題の特徴の一端がわかったような。
期せずして、得難い経験が出来たのでした。
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