ここ最近、良き出会いは电梯(エレベータ)で起こる。
同じフロアに引っ越して来た、素敵な日仏カップルの日本人奥さまと知り合ったのも、电梯の中。
ゴクミに似たエキゾチックで美しい風貌の彼女は、日本人には見えず、英語で話しかけたところから始まった。後で聞いたら、日本に住んでいた時も、表参道とか歩いていると、日本人たちから英語で話しかけられていたというから、日本人じゃないと思うのは私だけではなかった。ちなみに、我が家の阿姨に言わせれば、私の風貌も中国人にしか見えないらしく、この彼女と私が二人で話していると、「あなたたちが二人で居ると、誰も日本人同士とは思わないよ〜」と、爆笑される。
知れば知るほど、奥ゆかしい、育ちの良い日本人のお嬢様、という感じの人。常識的でデリカシーもあり、鈴のような優しい声で話す人。フレンチやモロッコ料理を本格的に学んだ、プロの料理人でもあり、ぜひご馳走になりたいと願っている。隣人がこんなに素敵な人で良かった、といつも思う。
それにしても、电梯での出会いって面白いな、と思っていたら、また一件、非常に面白い出会いがあった。
先々月くらいだったか、同じ敷地の別の棟の友人宅に行った時のこと。
电梯に乗ると、中に一人のヨーロッパ人の紳士が居た。この方が、私が日本人だと気づいて、流暢な日本語で話しかけてきたのである。电梯に乗っている、ほんの束の間、互いの家族構成やら、日本と中国の滞在年数、と言った基本情報について語り合い、「では〜」と言って別れたのだった。香港と上海を行ったり来たりしているビジネスマンだということだったが、まあ、互いに顔も覚えてないだろうし、ちょっとした一期一会の楽しい会話だったな、くらいだった。
ところが、今週、ビルの玄関で、運転手付きの車から降りたこの紳士にバッタリと遭遇。
そう・・・普段全く記憶力が悪い私が、唯一自慢出来るのが、実は、顔と名前は割と一度覚えたら忘れないということ。国籍を問わず、どんな名前でも、難なく覚えられる。
当然、すぐにこの紳士だとわかり、日本語で挨拶をしたところ、向こうも覚えてくれていて、軽く会話をし、名刺をいただいた。「ぜひ、メールでご連絡ください。うちの家内とあなたのご主人と、今度一緒に会いましょう」と、温かい笑顔。
メールで必ず連絡ください、と何度も言っていたので、きっと社交辞令ではないんだろう、と思い、メールを出してみたら、とても喜んでいただいて、まずはランチでもしましょう、ということになり、今日、ランチに行って来た。(ご馳走になってしまった)
ランチでゆっくりお話を聞いたら、色々とても凄い方だということが分かり、圧倒された。ある会社のCEOなのだが、日本語どころか、中国語もビジネスができるレベルで日常的に使える。日本に居た頃は、最高学府で学ばれたので、日本語のレベルも、自分が知っているヨーロッパ人の中で一番凄いのではないかというレベル。
しかし、こういう、凄い方に限って、とても腰が低く、所作がエレガントで、決して気取りが無い。私の知能レベルに合わせて(下りて来て、という方が正しいか・・・)、相応の会話をしてくださる。
上海に住んでいながら知らなかった、中国の色んな歴史の話、香港の億万長者なご友人たちの話、ヨーロッパの経済の話。
ある有名な香港の億万長者の一族がお友達らしく、どのくらい凄いのか、を教えてくれたのだが、あのギリシャの海運王・オナシスの総資産の5倍の資産、と言っていたので、もう、一般市民には訳の分からない値である。そんな凄い資産の友達と話すと緊張しません?と平凡な質問をしたら、いやいや、それが、ああいうお金に全く困っていない人たちは、何ともリラックスした雰囲気で、話していてとても良い気持ちになるんですよ、と教えてもらった。
個人的に一番印象に残ったのが、ヨーロッパ経済とユーロの話。穏やかな語り口の方だが、ユーロについて非常に悲観的なお話をしていた。スペイン、ギリシャの失業率、イタリアも問題になっている中で、ヨーロッパが一つであることのメリットがなくなり、フランスやドイツのような援助する側の国々にとっては、ヨーロッパ共同体は負担でしかない、というお話。きっと、ユーロは崩壊していくだろう、という。失業した若者たちの心は荒み、暴力的になっていく・・・
個人的な見解で、と前置きした上で、この方が言った意見が面白かったのだ。
このユーロの由々しき事態を救えた人が、ヨーロッパに居るとすれば、それはストロスカーン(DSK)だったが、彼があのような事件で去った今、彼ほど俯瞰的に物事を見て戦略を立てられるカリスマは居ない。オランドは些細な事を地味に解決するのはできるかも知れないが、カリスマも指導力もない。寧ろサルコジの方があったくらいだが、サルコジでさえ、救えない。救えるのは、DSKだけだった、ということに、ヨーロッパ人は後で気づいて後悔するだろう、と。
DSKについては、私自身、パリに居る間に色んな話を聞いたが、女性問題があまりに深刻だったために、やらしい変態オヤジ的な扱いで、彼の手腕や才能について声高に言う人が居なかった。私が以前から思っていた、陰謀論を展開しても、いやいや、彼は以前からセクハラで問題があったし、仮に陰謀だったとしても、そんなのに引っかかるなんて自業自得、的な返答ばかりで、彼の功績や手腕についての話を聞くことが出来なかった。それを、フランス人ではないこの方が淡々と教えてくれたのが、非常に興味深かった。
そこで、我慢出来ず、聞いてしまった。「ストロスカーンさんのあの事件は、個人的には陰謀だと思っています。でも、彼を嵌めて得した黒幕は、結局誰だったのでしょうか?」すると、意外にも、「そう、あれはどう考えても陰謀ですよ。サルコジと、サルコジと利害が一致したアメリカが組んで嵌めた以外には考えられない。」という返答。「アメリカは、ヨーロッパが覇権を握ることが気に喰わないので、ヨーロッパを強くしてしまうストロスカーンさんが目障りだったということでしょうか?」「そうです。ストロスカーンは、世界、という視点で経済を考えられる唯一の人だった。アメリカはナショナリストが多く、自国の事の方が大事。それに、今は、ドイツもアメリカと非常に関係が悪いですね。特にアメリカとドイツの財務長官は犬猿の仲で、ドイツの財務長官ショイブレはガイトナーに公に喧嘩を売ったりしていますからね・・・」
世界は広い。
知らない事はまだまだいっぱいある。
この広い世界で、电梯という狭い空間が繋ぐ面白いご縁が、これからの自分たちの未来に、何か大きな意義があることのように思えてならない、不思議な出会いなのだった。
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